父の介護は5ヶ月ほどでした。
介護3ヶ月くらいと経つと、だんだんと体が動かなくなり、寝たきりが続き、足がぞうのように膨らみ、皮膚も硬くなっていました。
皮膚が硬くなる過程で、足の痒みが出始め、自分では掻くことができないので、
「足を掻いて欲しい」
と言っていました。
起こしたり、寝かしたりすることは大変だったけど、足を掻くことは座ってできるし簡単なことでした。
母は、時間が許す限り、父が寝入ってもずっと足を揉んだり、掻いたりしてあげてました。
私もできる限りやっていたけど、介護も続くと、家のこと、子どもたちのこと、仕事のこと、ましてや実家から少し離れている場所に住んでいる私は本当に時間がなくなっていきました。
ある日、様子を見に来ただけだったけど、父に足を掻いて欲しいと言われ、1時間掻き続けても、父は寝てくれなくて。
これから夕飯の準備もしないといけないのに…
時間がなくなることにストレスを感じていた私は、あと10分で終わりねと言って、掻くことをやめ、帰りました。
帰りの車の中で、
なんで父が眠るまでやってあげなかったんだろう。
と後悔しました。
足を掻いてあげる。
1日の中の2時間くらい。
たったそれだけのことをする時間すら、本当にないのだろうか。
それ以来、父が休むまではやってあげようと決めたけど、もう父にはあまり時間がありませんでした。
痒いという感覚も薄れていき、眠る時間が増えていき、意思疎通もできなくなっていき。
今思うと、残り2ヶ月だった父の2時間と、私の2時間は質も価値も違う。
人は、「時間がない」という言葉を簡単に口にするけど、
時間というのは、その人の命の時間でもある。
自分のために使う命の時間と、誰かのために使う命の時間と考えると、
誰かのために使う自分の命の時間は、豊かさを超えて、高貴な時間だと思う。
たったそれだけのことを、無償でその人のためにする。
そんな時間を大切にしていきたい。
〜シンプルライフ〜
・家族、友人のために時間を使う。
・“たったそれだけのこと”と思うだけで、簡単でシンプルになる。